Works作品紹介
世田谷区下北沢の家改修 / 延230㎡
庭のまわりに3つの戸建て(3家族)で4世代が住む親子兄弟の複合住宅群です。 まず渡り廊下の増設、次に各戸内外のリフォーム、最後に全体の門の改修という数年がかりのリノベーションを行いました。ここでは物語のように引き継がれる記憶というのがテーマです。
4世代を繋ぐ橋(渡り廊下とデッキ)
母屋・応接室の改修
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母屋は昭和初期の文化住宅で玄関には洋間の応接室が接しています。この部屋をリニューアルすることになりました。これまで閉鎖的だった応接室をできるだけ明るくオープンにすることをテーマにしました。壁の一部をガラスブロックに、照明を替え、玄関からのドアはガラスの框扉に改修、また庭が見えるように扉や壁面に窓を設けました。孤立していた応接室が見通し良く全体につながったので、子どもたちの遊び場となったり、お祖母さんがピアノをひいたりアクティブなスペースになりました。内装各部のデザインはできるだけ元の意匠を保存するか継承するように心がけました。
黄色の外壁
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母屋に隣接する娘さん家族が住むRC造住宅は30年以上前に私が基本計画をした、崖際に立つコンクリート住宅です。不定形の崖地なので、南欧の鷹ノ巣村のようなイメージに近い凹凸のある段々型となっています。当初、外壁は白色でした。 リフォームすることになり、外壁も珪藻土による全面塗り替えとしました。 その時の珪藻土外壁の色について悩みました。 周辺の環境に調和することは必要ですが、単に無難なだけではなく、もうすこしはっきりした主張があって良いと思いました。 その時、施主の娘さんから何気なく「外国では黄色い家は豊かになるという言伝えがあるそうよ」と言われたのです。 私は「よし、これでいこう」と考え、かなり大胆な色ですが、草木染めの色にも通じる 日本的な黄色を検討した結果がこの外壁色となりました。 陽が強く当たるとはちみつ色に輝いて、活き活きとした表情になったと思います。 周辺に住む方からも好印象の言葉をいただいたと聞いています。 施主のちょっとした言葉がヒントになって、環境に調和しながらも個性的な外観になりました。この「黄色い外壁」が、この4世代複合住宅の正門の改修「黄色の門」に連係します。デザインは「繋がること」でもあります。
黄色の門
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全体敷地の老朽化した正門を撤去して新しいコンクリートの門をつくりました。すこしモダンなデザインで漆喰系の黄色で塗装しました。これによってこの住宅群には黄色というテーマカラーができて入口のイメージはとても明るくなりました。 それから門周りの外構を整理してアプローチの小広場をつくりました。ライムストーンの床張りとしてそこにかつての門柱を覆っていた鉄平石など、思い出の石をできるだけ埋め込んでこれまでの家の記憶を残しています。 門という小さな仕事ですがこの住宅群全体のイメージを豊かにすることができたと思います。
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真中は母屋、昭和十年代に建てた築70年の木造住宅で85歳のお祖母さんが住んでいます。隣は娘さんご夫婦、孫、ひ孫が暮らすコンクリート住宅です。 この2つの家は庭でしか繋がっていなかったので、その行き来はかなり面倒でした。 そこで、2つの家をつなぐ渡り廊下をつくることとなりました。 私はそれを単なる廊下ではなく、庭に張りだしたサンルームのように広がりのあるスペースとして提案しました。それだけで移動は随分楽しい道行になったのです。するとさらにこの廊下から庭に面してウッドデッキのテラスを設けたら、ということになり実現したものです。 このデッキではお祖母さんがいつも自慢の庭を眺めて過ごしたり、学校から帰ったひ孫たちも遊びまわっています。四世代をつなぐ橋(渡り廊下とデッキ)ができて、お祖母さんは「これからはもっと長生きできそうな気がする!」と言うようになりました。 楽しい空間は人を、特に高齢者を元気にします。